2026年7月15日、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」が成立しました。この改正法には「企業のサステナビリティ情報の開示・保証」が柱の一つとして盛り込まれており、これまで「予定」「方針」として語られてきた開示と第三者保証の義務化が、法的な裏付けを持って確定したことになります。サステナビリティ関連部分の施行は2027年4月1日からです。 ここまでの流れを整理すると、2025年3月に日本版のサステナビリティ開示基準「SSBJ基準」が公表され、2026年1月8日に金融審議会のワーキング・グループ報告で保証制度の全体像が固まり、同年2月に内閣府令が改正、そして7月の法改正成立、という順序をたどってきました。 ■ 開示義務化のスケジュール 対象となるのは東証プライム市場の上場企業で、時価総額(過去5事業年度末の平均)の大きい順に段階適用されます。 ・3兆円以上:2027年3月期の有価証券報告書から ・1兆円以上3兆円未満:2028年3月期から ・5000億円以上1兆円未満:2029年3月期から 5000億円未満の企業への適用は、今後の開示状況や投資家のニーズを踏まえて検討されることになっています。 ■ 第三者保証(アシュアランス)はいつ、どこまで 開示情報の信頼性を担保するための第三者保証は、開示義務化の開始時期の「翌年」から義務付けられます。つまり3兆円以上の企業であれば、開示が2027年3月期、保証が2028年3月期からという形で、1年遅れで追いかけてくる設計です。 当初の保証範囲は限定されており、最初の2年間はScope1・2の温室効果ガス排出量、ガバナンス、リスク管理が対象です。保証の水準も、まずは「限定的保証」から始まります。3年目以降の範囲拡大については、国際的な動向を踏まえて引き続き検討されることになっています。 保証の担い手は、監査法人に限定されません。国際基準に整合した要件を満たす法人であれば、監査法人以外でも登録制のもとで保証業務を行えるという制度設計になっています。 ■ 中小企業への影響は「間接的」だが確実 直接この制度の対象になるのは、当面はプライム市場の大企業に限られます。しかし影響は着実に、そして静かに中小企業にも及んできます。 最大の理由は、Scope3(サプライチェーン全体の排出量)です。義務化対象となった大企業は、自社の排出量だけでなく、仕入先・外注先を含めたサプライチェーン全体の排出量を把握し、開示する必要に迫られます。つまり、大企業と取引のある中小企業は、遅かれ早かれ「御社の排出量を教えてください」という依頼を受ける可能性が高いということです。 しかも今回、大企業側のScope1・2には第三者保証がかかります。保証を受ける立場の企業は、自社の数値の裏付けに神経を使うようになります。その意識は、取引先に対する数値の求め方にも波及していくと考えられます。「なんとなくの概算」ではなく、根拠のある数値を求められる場面が増えていくということです。 ■ 今のうちにできること 義務化はまだ先のことだからと構えるのではなく、今のうちに次の準備を進めておくと安心です。 1. 自社のCO2排出量(Scope1・2)を把握し、記録する習慣をつける 2. 算定の根拠(使用量の検針票、使用した排出係数など)を残しておく 3. ガバナンス・労務管理など、開示を求められやすい項目を文書化しておく 4. 取引先から開示を依頼された際、慌てず対応できる体制を整えておく 特に2番目は、これまであまり意識されてこなかった点です。数値そのものだけでなく「その数値をどう出したか」を説明できることが、これからは効いてきます。 制度の細部は政令・内閣府令等で今後さらに具体化されていきますが、大枠が法律で固まった以上、方向性が覆ることは考えにくい状況です。「早めに現状を把握し、根拠とともに記録する」という土台づくりを、いまのうちに始めておくことをおすすめします。 ▶ 当サイトのCO2算定ツールなら、電力・ガス・燃料の使用量から排出量を算定し、使用した排出係数の出典まで含めたレポートを出力できます。あわせて「ESGラクラク診断」で、ガバナンス項目を含む現在地の確認もご利用ください。 (出典:金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」、金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告(2026年1月8日))